アジアな空間

日常の出来事や、アジアに関することを書き綴ります。

アジアな空間 その909 能力以上の題材を卒論のテーマに選んだ学生 の巻

 先月、インドネシアの大学で日本語を専攻する学生が、自分の卒論を見てほしいと言ってきました。テーマは何かと聞くとオノマトペだという。そういえば、去年、その話を相談された時、管理人は止めた方がいいとアドバイスしたのですが、どうしてもやりたかったらしいのです。

 夏目漱石の「坊ちゃん」の中に出てくるオノマトペを拾い上げて、それらの言葉がインドネシア語の世界では既に受け入れているのか、またはインドネシア語には受容されないものなのかを考察するというのです。
 先日、その学生がリストアップした100を超えるオノマトペといいし単語のデータが送られてきました。
「え?こんなにあるわけないじゃん???」
と一瞬いや〜な予感。

 形容詞や副詞のオンパレード。

 管理人もだんだん疑心暗鬼になってしまい、途中から日本語教師と国語の教員に相談してみました。答えは、
「これ、ほぼ形容詞と副詞で、オノマトペに分類しない語句だわね。」

 その通りに学生に伝えてデータを返却。その後、この学生はどうしたのか?怖くて聞いていません(笑)。


 一昨日の夜、その学生が相談があると言ってきました。なんでも自分の友人が卒論が原因で精神的にまいってしまい、部屋に引きこもりになり、食事もしなくなり、ついに精神科を受診しているというのです。
 管理人に何ができるのか?と聞くと、その友人の卒論が正しいかどうか検証してほしいというのです。その学生は、さくらももこの「ひとりずもう」を題材に、複合語の構成を考察するというもの。

 そのために、複合語が含まれる文章を抜き出して、それをインドネシア語に翻訳する作業をしているとのことでした。

 管理人は原書を持っていませんでしたが、とりあえずデータを送るよう伝えました。日本語の原文を数行読んで、すぐにこれは論文への引用のルールにのったやり方ではないと気づきました。
 その学生は、自分の都合で勝手に文書を短く縮め、省略したことも断り書きがないまま。さらに、インドネシア語訳は、短くした引用部分には書かれていないことまで訳文が載っている。さらに、日本語能力がN3以下の状態ですから、そもそも原文を理解できていないばかりか、訳文のレベルもかなり稚拙な作文程度でした。

 内心「これはえらい作業になりそうだなぁ。。。」と不安が頭をよぎりました。
 昨日、書店で「ひとりずもう」を購入、その学生が拾い上げた文章が出てくる箇所を特定し、前後の内容も含め、全文訳し直しの作業。

 そもそも、なぜこれが私のところに来たのかといえば、その大学には日本人教員がおらず、インドネシア人の教員のみで指導しているため、教員自身も日本語が正しくインドネシア語に訳されているかどうか、性格にジャッジできない模様。ゆえに、日本語とインドネシア語が同じ様に使える人にチェックしてもらうように、と「指導された」というのです。
 思えば、オノマトペの時も、その学生が送って来たデータがその状態であったのは、教員自身があまりよく理解していなかったからではないか?と、今頃になって納得しています。

 余談ですが、「ひとりずもう」の文章は、一文、一文がだらだらと長くて、井戸端会議の日本語を書き取ったがごとく、あまり感心しないのですが、それをインドネシア語に訳そうと試みると、やっぱり美しくないインドネシア語になってしまうのです。ということは、そのままの直訳ではなく、内容を深く理解して訳さないと、思いっきりとんちんかんな作文になってしまいます。

 なにはともあれ、この二人の学生が無事に卒業できるよう、管理人、もう少し頑張ってみます。