昨日の昼頃、日本から仕事で訪バリ中の方とバリ島観光をすることになり、運転手に主立った観光地を告げ、移動ルートはお任せでデンパサールを出発しました。
いつ見ても代わり映えがしない農村の田園風景に、時折ちょっとした集落や町並み風景を交互に眺めながら、最初の目的地ウブドへ向かいました。バビグリン(豚の丸焼き)で有名なイブオカでランチのためです。
ウブドの手前あたりで、運転手が、
「あ、ここで葬式やってますよ」
と言うので、急遽、その葬式を見ることにしました。
日本風に言えば、出棺の直前というタイミングでした。黒い牛のハリボテと白いタワー型の神輿風なものがそれぞれ1ずつ。担ぎ手の男たちが大勢集まっていました。ガムランの生演奏も響き渡り、出棺。
近くの火葬場に向かってスタートしました。後を追いかけて行ってみました。何もない野原のような場所には、火葬するための台が設営されていて、人々が集まっていました。
黒い牛の背中が切り開かれ、中に遺体と遺品、葬送品などが納めらられ、あっという間に火が放たれました。わぁ〜っと力強く炎が舞い上がり、火葬が始まりました。葬式行列に遭遇することは、これまでも何度もありましたが、火葬をするシーンを間近に見たのは初めてです。
勢いよく燃え盛る黒い牛。でも、納められたはずの遺体はどこにも無い。不思議だなあ。。。と思っていました。でも、これがバリヒンドゥーの火葬、人生最後の最大で盛大な儀式と聞いていたNgaben(ガベン)なんだろうなぁ、、、と思い、火葬場を後にしようと出口に向かって歩きました。ふと後ろを振り返り、牛のお尻のほうから頭部方向に目を向けた時、飛び込んできた光景はすごかった。
おそらく、牛があっという間に燃えてしまい遺体が一瞬にして台の上に落ちて、そこで荼毘にふされていたのを、横方向からは見えなかっただけだったのです。
一瞬なんだかよくわからなかったのですが、ふと我に返ると、そこには最もシンプルな火葬の光景がありました。ドキッとしました。日本からのお客さんに、
「あ!下にあります。」
というと、そのお客さんは、
「先生、大丈夫ですか?あ、ホントだ、いらっしゃいますね」
と、二人はそそくさとその場を後にしました。
運転手は、離れたところで車を止め、
「私はここにおりますから」
といって待機。まあ、暑いからだろうと思っていました。移動途中、
「さっきの火葬は、カーストが高い人の火葬です。牛の棺桶は、普通のカーストの人は使えないのです。僕は、火葬を見たことがありますが、怖いです。夜に思い出してしまうので、さっき、離れたところで待っていました」
と話していました。
確かにびっくりしました。
しかし、これがバリ島に生きる人々のヒンドゥー教徒にとって、省略、簡略化することができない人生で最も重要な儀式なのです。荘厳さはないのですが、人を見送る最後のシーンは、共同体のみんなが盛大ににぎやかに執り行うもの。
生と死を考えた瞬間でした。