アジアな空間

日常の出来事や、アジアに関することを書き綴ります。

アジアな空間 その807 伝承 の巻

 この前、テレビでルーツを探る番組をみました。芸能人の家系に関するルーツですが、女優の余貴美子さんのルーツをやっていました。
 苗字からも日本人ではないと思っていましたが、お父さんは台湾出身で、お母さんは日本人だとか。そのお父さんが、どうして日本へわたってきたのか、を探る番組でした(余さんのルーツの詳細は省略)。

 ところで、この余さんのお父さんのように、戦前に台湾から日本へ移住した方たちが、終戦後、台湾へ戻るか、日本にそのまま残るのかを選択する機会があったようで、日本に残った台湾の方たちは同胞助け合って商売に一生懸命だったようです。大成功した方ばかりではないと思いますが、異国で生きるということは、強くならなければならないということ、を心の支えに日々がんばったようです。

 その余さんの外国人登録証に本籍のような欄に、中国本土のある村の名前が書かれているそうですが、その村は本当に実在するのかどか、どこにあるのかもわからなかったそうです。番組の取材で明らかになったのは、余さんの祖先は、200年ほど前に、その外国人登録証に記載されている村から僅かの物を持って船に乗り、台湾やインドネシアへ移民していった経緯があることがわかり、その村はその後、名前が変わったため現在の地図には旧名では載ってないこともわかったようです。

 中国の福建省広東省の省境にあるその村は、客家の人たちが生活する集落があり、大きな家に複数の家族が共同生活することでも有名な客家の伝統家屋を訪問。そこには、先祖崇拝のための祭壇があり、同胞が成功すれば集落の人々が集まり祭壇に祀る先祖へ感謝の礼拝をするのだそうです。

 台湾には、同じ姓の人たちが作る協会があるそうで、そこには、その姓の家系図が電話帳のようになって綴られているものがあるようです。これはこれですごい!と思いました。

 日本ではあまり先祖や自分のルーツを知ろうとする人は多くないのと、普段、ほとんど考えることもありませんが、中国系の人々の先祖崇拝のような習慣は、自分を知り、生きることに感謝できる一つの習慣だと思うと、よい習慣だと思いました。

 今年の初めに、葬儀のために中部インドネシアに位置するスラウエィシ島のマカッサル市へ行った時。亡くなった方の自宅から葬儀ミサを行う教会にむけて出棺する前に、白いワイシャツに黒いスラックスを履いた男性陣がやってきました。習慣を知らない管理人は、葬儀屋さんか?と思って傍観。
 すると、代表者らしき男性が、
「私たちは亡くなられな方と同姓の協会を代表し、哀悼の意を表し。。。。」
と挨拶をするなり、廟でお祈りするあのパターンで礼をし始めました。

「へ〜〜〜、こういう習慣があるんだ。。。同姓の協会の方が弔問にきて見送るんだ。。。」

 なんだかんだとバッシングされることも多い中国ですが、大陸を離れて異郷の地に根付いて生きる中国系の人々が、彼らの祖先がそうしていたように、節目節目で行ってきたであろう中国由来の習慣を守り後世に伝えていくことは、時代がどう移り変わっても受け継がれて行くだろうと確信したシーンでした。