アジアな空間

日常の出来事や、アジアに関することを書き綴ります。

アジアな空間 その439 新たな一年 前進!前進!前進! の巻

 東日本大震災から一年が経過した今日。あっという間に過ぎ去った一年と感じるのは、自分が直接の被災者ではなかったからであり、もし自分が仮設住宅で生活をし、失業して将来への見通しが立たない身であったなら、あまりにも長い一年だっただろうと想像しています。

 夕方、時々、見守りのために電話をして様子確認をしている80歳になる一人暮らしのおばあさんとの電話で、おばあさんはこんなことを言いました。

「今日は一年だっていうから、あの時間になったらお祈りしたり黙祷したりするという話があったでしょ。私、1人で家に居たくなくて美容院で髪をきれいにしてもらって、美容院で他の方たちとあの時間を過ごしてしまいたいと思ったの。私、テレビを見ていると、若くして夫を失ったり、妻を失ったりして、ホントに辛い出来事に苦しんでいる人がたくさんいるのを見るとね、私は死んだ方がいいと思うことがある。だって、私のような年寄りは何の役にも立たないばかりか、みなさんに手間ひまかけさせて、足手まといになる厄介者だから。若い人が生きてくれればよかったと思うよ。」

 管理人の口からとっさに出た言葉は、
「そんなことないよ。高齢者は生きなくちゃダメだよ。家族を失った若者たちはもちろん気の毒だし、あまりにも突然のことで辛いなんてもんじゃすまされない大惨事だったと思う。でも、だからといって年寄りは役立たずで足手まといだとは思ってほしくないな。だって、高齢者は焼け野原になった日本を復興させ、あっという間に先進国日本を勝ち取った私たちの宝だもの。祖末にできない。」
でした。

 すると、そのおばあさんは、しばらく別の話をした後、
「ヘルメットっていくらくらいで売ってるの?私も買おうかな・・・。」
というので、1000円くらいのを見たと伝えると、
「でも、もしまた地震が来たら、やっぱり私は死んだ方がいい。助からないで。みんなに迷惑だ。」
と言い出したのです。

「あのね、今は元気で動いているから簡単に死んだ方がいいかもというけど、窮地に追い込まれたら、普通の人間だったら強く”生きたい”と切望するに違いないと私は確信してるの。だから、迷惑だなんて思わないで、備えるものがあれば備えた方がいいよ。」
と半分説教のような慰めをしました。すると、おばあさんは、
「でもさ、ヨボヨボの体で非常時の備蓄品なんで持って逃げられないし、やっぱりいらないな。」
というのです。

「まさか、おばあちゃんが自分で物を担いで逃げようと思ってるわけじゃないよね。おばあちゃんが歩けない、走れないと思えば、まわりの力ある人がおばあちゃんを担いで運んでくれる。物だって。だからやっぱり備えた方がいいよ。」
と慰めました。

 あらためて、生きるというのは大変なことで、生きていろいろな思いを積み重ねていくものなんだなぁと考えさせられました。

 さて、被災地からは、復興に向けてがんばりますという声か聞こえてきますが、被災地の皆さんが気持ちの上で孤独を感じたり、追いつめられた気持ちにならないよう、メンタル面での復興支援もとても重要だと思いました。

 被災地のみなさんが、がんばる、がんばるといっても限界があるでしょう。これからより本格的な復興活動が期待される中、昨日より今日、今日より明日、明日より明後日、と小さな歩みであっても前進していることが実感できる新しい一年になってほしいと思います。