アジアな空間

日常の出来事や、アジアに関することを書き綴ります。

アジアな空間 その1328 「武蔵」から生き残った証人の話 の巻

 最近、「武蔵」が見つかった話題でニュースが盛り上がっています。昨晩、武蔵の乗組員だった男性がテレビで当時の様子を証言していました。

 「海に投げ出されて、どうにか浮かんでいるために、板のようなものをお腹のあたりにあててプカプカ浮いていました。50人くらいが1組で、数組が互いに身を寄せて漂流していましたが、途中で眠気が襲ってくるので、みんなで軍歌を歌って眠気と闘って過ごしました。」

 この証言を聞いて、私は一人のおじいちゃんを思い出しました。もうお亡くなりになったのですが、青木次郎さんというおじいちゃんです。この方は「めきしこ丸」という船で「ボカチン」を受け、30数時間漂流して生還したおじいちゃんです。
 「船が攻撃され、傾く船の高い方にみんなが避難するけれど、どんどん沈む一方。それでも最後まで船にしがみついていると、上官がしがみついている手の指を棒で叩くので、痛くてとうとう手を離してしまい、海に放り出されたんだよ」

 「火の海という言葉があるでしょう。本当に辺り一面、火の海になってしまった。船の油に火がついて、それはもう地獄絵だった。それでもなんとかその火を逃れた兵隊たちは、流れ来る木の棒や板につかまって浮いているわけ。」
「だれかが、泳いで移動しようというけれど、他の誰かが動くな!動くとサメがやってきて喰われてしまうぞ!って叫んで。そしたら、今度は体が冷えてきて寒くてしょうがない。そしたら、また誰かが、オシッコすると足の辺りがあったかくなるぞ!って言ったりね。次第に疲れて眠くなってくる。でも、眠くなって寝てしまったら死んじゃうから、みんなで軍歌を歌おうといって歌ったりね。とにかくひどいもんだった。」

 おそらく、昨晩テレビに出演されていた方も、同じような経験をしていらっしゃったことでしょう。

 ところで、この青木さんというおじいちゃんは、晩年、戦時中の思い出の地、インドネシア共和国スラウェシ島のマナドという地域に滞在され、地域の医療、教育環境の改善に力を尽くされました。プロテスタントの信者さんであり、あつい信仰のもとに、同地の人々の幸せのために働かれました。

 宗派は違いますが、管理人の信仰生活のよき友、人生の先輩であった青木さん。昨日の番組をみて、ふと思い出しました。